東恩納裕一: Family Resemblance
誇張されたモチーフやパターン、文脈を離れて持ち込まれた質感——人工的で生命感がなく、不自然なほど明るい光を放つ蛍光灯や、それ自体が独立した存在のように主張する鮮烈な色彩。こうした要素は、「キッチュ」や「悪趣味」に近い意味をもつ日本語の「ファンシー(Fanshii)」と呼ばれる感覚と結びついてきました。20世紀中頃の日本の家庭のインテリアは、西洋文化への憧れを背景に、こうした「ファンシー」的な物質性に彩られていましたが、それらは単に西洋的でも、日本的でもありません。むしろアーティストの東恩納裕一は、それらを「不気味なもの/unheimlich(ウンハイムリッヒ)※」として捉えています。一見なじみ深く見えるにもかかわらず、どこか不安や違和感、時には恐れを伴う感覚。その「親しいものが親しくないものへと変わる」状態こそが、彼の多様で多彩な作品世界を形づくっています。東恩納は、この感覚をさらに押し広げ、別の領域へと展開しているのです。
本書は、東恩納の個人的なアーカイブから選ばれた262点の画像——完成作品、展覧会風景、制作過程の写真、そしてドローイング——を収録しています。それらを通して、彼の広く多岐にわたる作品群が、まるで変異を繰り返すかのように互いへと連なっていく関係性を可視化すると同時に、本そのものもまた「物質状態の不気味さ」を帯びていくことを目指しています。
本書は、わずかに角度をつけてホチキスで綴じられた二つのパートから構成されており、最初は裏表紙が読者の前に現れるよう、裏返しの状態になっています。書物という定型からほんの少し外れることで、日常的な落ち着きから離れ、どこか物活論的な「ウンハイムリッヒ」へと導く仕掛けとなっています。作品の図版もまた、綴じの角度と呼応するようにわずかに傾けて印刷され、年代順でもカテゴリー順でもなく、作品同士の「感覚的なつながり」を手がかりに構成されています。蛍光灯の球体が、線を反射する鏡の球体へ、さらにその線が壁に貼りつけられたものへと変わるように、イメージは次々と姿を変えていきます。最初から最後まで、この流動し変容する思考の流れや、作品が生まれ育つ潜在的なネットワークのようなものが示されています。
また、アートライターの住吉智恵、哲学者の千葉雅也、建築家の門脇耕三によるエッセイも収録されており、東恩納の実践に「不気味なもの」がどのように深く絡み合っているのかについて、それぞれが独自の視点から読み解いています。
※ 『不気味なもの(Das Unheimliche)』ジーグムント·フロイド 1919年
ページ: 114
サイズ: 225 x 300 mm
フォーマット: ソフトカバー
刊行年: 2025
言語: 日本語、英語
出版: ori.studio
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