Yuta Takahashi、メンズコスメブランド「FIVEISM x THREE」のプロダクト、パッケージデザイン

Published: 2018.12.12
Category: Interview
Yuta Takahashi、メンズコスメブランド「FIVEISM x THREE」のプロダクト、パッケージデザイン
Yuta Takahashi(YT)は、愛媛を拠点とするアートディレクター兼デザイナー。繊細な仕事は、国内のみならず国際的に評価されています。彼が手がけた、業界初のメンズコスメブランド「FIVEISM x THREE」のプロダクト、パッケージデザインについての話を伺いました。
NE:
FIVEISM x THREEについて教えてください。
YT:

FIVEISM x THREEは、業界初のメンズ総合コスメブランドです。ラインアップは、メイクアップベース、ファンデーション、アイシャドウ、アイブロウ、リップ、ネイル、マルチユースカラーなど、自由な自己表現を可能にするアイテムが総合的に取り揃えられています。日本の人気コスメブランド「THREE」から、今秋に発表された新ブランドです。

ブランドのコンセプトは、「インディヴィジュアリティ(個性)」。性別や年齢、国境、常識、偏見から自由になり、誰もが他者とは異なる唯一の存在としてリミットレスな自己表現を可能にする、という意味が込められています。

Yuta Tkahashi、メンズコスメブランド「FIVEISM x THREE」のプロダクト、パッケージデザイン。
NE:
どのような経緯でこの仕事を手がけることになったのでしょう?
YT:

海外メディアに掲載されていたコスメブランドの記事を読んでいて、「コスメブランドの仕事がしたいな」と思いながらスマートフォンを置いた時、ちょうど着信がありました。電話を取ると、「コスメブランドのプロダクトデザインをして頂けませんか?」と。あまりのシンクロに驚いたことを覚えています。

それから本社で話を伺い、2つの驚きがありました。1つは、日本から業界初のメンズ総合コスメブランドが立ち上がるということ。新しい価値観を提案する、様子見ではなく開拓する、情熱に溢れた方々と仕事ができることに喜びを感じました。もう1つは、私が普段からメイクをしていたことがきっかけで、その場で起用が決まったことです。社長が「これからは男性も身だしなみやマナーの一環としてメイクを行う時代がくる」と熱く話していた時、私が「あの、今メイクしているんです」と。

Yuta Tkahashi、メンズコスメブランド「FIVEISM x THREE」のプロダクト、パッケージデザイン。
NE:
パッケージを含めた商品全体のデザインにはどのような思考や理念が貫かれているのでしょう?
YT:

ブランドのアイデンティティに即したデザインを行いたいと考えました。それはフェミニンでもマスキュリンでもなく、超越。将来的には、男性も女性も使用できるプロダクトになることを念頭に開発を進めました。

Yuta Tkahashi、メンズコスメブランド「FIVEISM x THREE」のプロダクト、パッケージデザイン。
“ブランドの代表的なアイテムであるファンデーションをバー形状にした。”
NE:
様々な形状がある容器のデザインについて教えてください。
YT:

女性用のメイクアイテムを取り寄せ、鏡の前でメイク動作を繰り返しました。これまで男性に馴染みのなかった「メイク」という女性特有の文化について学ぶことから始めたのです。メイク動作を繰り返すうちに(当たり前なのですが)「これは女性用にデザインされたアイテムなのだ」と気付いたのです。メイク文化は、長い年月をかけて女性用のアイテムとなりました。その延長線上で考えるのではなく、男性の所作や振る舞いに、根本からフィットするアイテムに出来ないかと考えたのです。メイクアイテムを無理に男性用にするのではなく、女性の心理を理解することで、それとは異なる男性の心理も理解出来るのではないかと。

例えば、女性らしい仕草としてコンパクトなどを手のひらで持つ、という仕草が挙げられます。手のひらでモノを持つということが女性的な雰囲気になるのに対し、指先でモノを持つということが男性的な雰囲気を作るということに気付いたのです。心理学実験において、女性は手のひらでドアノブを握る傾向があるのに対し、男性は指先で握る傾向があるそうです。こうした認識を発展させ、男性が違和感なく使用できるスティック状の「バー」と呼ばれるアイテムの着想に辿り着きました。

ブランドの代表的なアイテムであるファンデーションをバー形状にし、このアイテムを軸に他のプロダクトデザインを発展させました。また、「FIVEISM」という名前の由来になっている「5」という数字。五大元素、五線譜、五大陸、陰陽五行、五輪書、五感など、世の中には多くの「5」が存在しています。「5」は自由と変化を意味する数字、転じて新たな境地を拓くという意味があるそうです。プロダクトデザインにも「5」という数字を応用し、バー状のファンデーションは、アイテムの縦横比が5:1で形成されています。

アイシャドウなどは、容器部分の倍に当たる面積の持ち手を付加しました。これによって手のひらで持っていたアイテムが、指先で持つことができるアイテムになりました。また、ビジュアルもZippoのような遊び心のあるプロダクトに仕上がりました。アイテム側面のカーブは、スクエア状のブロックを手作業で削り出したものが原型です。それをデジタル化しました。角が鋭過ぎず、丸過ぎることもないカーブは、自然と手にフィットし、性別を超えたジェンダーフルイドなブランドの世界観を体現しています。

Yuta Tkahashi、メンズコスメブランド「FIVEISM x THREE」のプロダクト、パッケージデザイン。
NE:
特徴的な加工が施されているパッケージのデザインについて教えてください。
YT:

プロダクトデザインに用いた哲学を、パッケージにも適応したいと考えました。紙に適した形で、性別の融合、超越を表現したいと思ったのです。そこで、シンボルマークから抽出したドットを規則正しく並べ、紙にエンボス加工しました。これはミクロの視点でみるとドット(女性的)として見えるものが、マクロの視点で見ると斜めに交差するライン(男性的)のように見えます。また、影の入り具合によって表情が変わり、多様性を称賛するブランドのアイデンティティを象徴しています。

メイク前後の顔が驚くほど変化するのが商品の特徴です。男性が「メイク」と聞くと倦厭しがちですが、私たちが普段連想する「メイク」ではなく、私なりの言葉で表現するならば「ジムで3ヶ月トレーニングした引き締まった顔つき」。ブランドでは、それを「ステルスメイク」と呼んでいます。それが朝の3分で手に入る。皆さんも試して下さい、面白いですよ。

Yuta Tkahashi、メンズコスメブランド「FIVEISM x THREE」のプロダクト、パッケージデザイン。
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