Never Now: Pan Afterのビジュアルアイデンティティ

Published: 20.06.17 Category: Interviews
Never Now: Pan Afterのビジュアルアイデンティティ
Never Nowは、メルボルンを拠点にブランディングとコミュニケーションを専門とするデザインスタジオです。クリエイティブ・ディレクターのトリスタン・セディア(Tristan Ceddia / TC)のもと、写真家、建築家、アーティスト、思想家などの幅広いネットワークで活動しています。日本の広告・クリエイティブ誌「ブレーン」の表紙デザインを手がけたこともあります。トリスタンに彼らが手がけた「Pan After」の仕事について話を伺いました。
NE:
「Pan After」について教えてください。
TC:

「Pan After」は、環境に配慮して生産された世界中の商品を扱うメルボルンのお店です。

NE:
どのような経緯でプロジェクトに関わることになったのでしょうか?
TC:

私は、フィービー、そして彼女の母親のマンディと5年ほど前に一緒に仕事を始めました。当時、彼女らはクイーン・ヴィクトリア・マーケットの古い建物に、「Pan After」と「After Store」の2つの店舗を持っていました。2019年にコリンウッドの倉庫に新しいスペースをオープンし、2つの事業を「Pan After」として統合したことで、新しいスペースに合わせてブランドとビジュアルの方向性を新たにする機会が生まれました。

“タイポグラフィもブランドと同じような旅路を辿るように”
NE:
Pan After」のビジュアルは、タイポグラフィとネガティブスペースが印象的です。ビジュアルアイデンティティのコンセプトと意図を教えてください。
TC:

Pan After」ブランドでは、空間と配置を重視して、旅情を演出したいと思っていました。お店に行くと、コペンハーゲンの「Tekla」のタオルがあったり、メキシコの洗いブラシがあったり、ケープタウンの三角コーンで作られた巨大なロブスターがあったりします。タイポグラフィも同じような旅路を辿るように、言葉を棚の上のアイテムのように扱い、不規則な間隔で配置し、このような調和を生み出したいと思いました。

このブランドには2つのワードマークがあり、用途に応じて拡張したり、縮小したりします。1つ目のマークは、フィリップ・ハーマン(アウト・オブ・ザ・ダーク)による素晴らしいゴシック書体「Toy」。2つ目は、ボディコピーに合わせたフィル・バーバーによるグロテスク / 幾何学書体「Maria」を使用しています。これらの対極的な書体と、風変わりなスペーシングや色、パターンの組み合わせは、それぞれの新しいフォーマットに容易に適応できる柔軟なフレームワークの中で自由なブランドを作り上げています。

NE:
なぜ「Toy」と「Maria」を選んだのでしょう?
TC:

「Maria」は力強く、この根底にある不規則性がブランドに対する私の考えと完全に一致していました。オンラインで紹介されていた「Toy」がどのように機能するかは知っていましたが、実際に試し代替文字などを見てみると、落ち着いたエネルギーが感じられました。店頭にある商品の多くがハンドメイドで作られているので、両方の書体を一緒に使っても、単独で使っても、少し風変わりで意外性を感じるようにしたい思いました。

NE:
プロジェクトに適した書体をいつもどのように選択するのでしょうか?
TC:

私はいつもオンラインでフォントのトライアルや良いフリーフォントを探しています。主流なものから個性的なものまで、どれも大好きです。いざというときに備えているので、新しいことに取り組む時は、多くの場合は直感があり、そこから自由に流れていきます。仕事を始めて最初に友人に教えてもらったことのひとつは、フォントを曲げたり、伸ばしたり、角度をつけて配置することでした。なので時間が経つにつれ、既存のものを壊して新しいものを作るという感覚を身につけてきました。

NE:
仕事に取り組む際のチームやコラボレーターについて教えてください。
TC:

通常はひとりで仕事をしていて、プロジェクトに応じてチームを作っています。このブランドの仕事を始める前に、アリス・アールはフィービーと一緒にボウルや包装紙のパターンをいくつか作っていました。それがブランドの方向性に合っていて、色のセオリーを教えてくれました。ブランドが完成してからは、写真家のジョシュ・ロベンストーンと一緒にプロジェクトの資料を作成しました。それとは別に、長年の協力者であるリック・ミロヴァノヴィッチとパートナーを組んで、エキサイティングな新プロジェクトを近々立ち上げようとしています。

Images © Never Now