M.Giesser、New Volumesのビジュアルアイデンティティ

Published: 2018.10.23
Category: Interview
M.Giesser、New Volumesのビジュアルアイデンティティ
M.Giesserは、マイク・ギッサー(Mike Giesser / MG)によるメルボルン(オーストラリア)のデザインスタジオです。彼は18年間に渡り、カナダ、オランダ、オーストラリアで活動してきました。現在はオーストラリアのデザインスタジオRoundでもデザインディレクターを務めています。彼が手がけた仕事のひとつ、「New Volumes」についての話を伺いました。
NE:
New Volumesについて教えてください。
MG:

New Volumesは、Artedomusという企業の家具、家庭用品のコレクションです。各コレクションの目的とアイデアは、単一の素材を使用してできることの限界を広げることです。コレクション01は、エルバという大理石のように見えるギリシャの石を使用して製作されましたが、専門的には大理石より強く、耐久性のあるドロマイトという素材です。

コレクション01は、ロス・ガーダム(Ross Gardam)、ニック・レニー(Nick Rennie)、デイル・ハーディマン(Dale Hardiman)、マーシャ・ゴロック(Marsha Golemac)、トーマス・カワード(Thomas Coward)、サラ・キング(Sarah King)、トム・スキーハン(Tom Skeehan)、エマ・エリザベス(Emma Elizabeth)といったオーストラリアのデザイナーによるものです。今後のコレクションは、海外のデザイナーにも扉を開くでしょう。

New Volumes
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NE:
どのような経緯でこの仕事を手がけることになったのでしょう?
MG:
2017年11月にプロジェクトがスタートし、2018年6月にすべてが公開されました。家具やプロダクトを手がけるトーマス・カワード(Thomas Coward)からインスタグラムを通じて連絡がありました。少し話をすると友人やクライアントが共通していることが分かり、話は早く進み、最初から相性が良かったように思います。プロジェクトはまさに私が待ち望んでいたような仕事でした。
New Volumes
NE:
アイデンティティはどのようなコンセプトと戦略をもとに制作されたのでしょうか?
MG:

11月と12月はブランド戦略に取り組んできました。ある意味ではとても簡単であったといえるでしょう。オーストラリア国内には実質上、似たことをしている人は誰もいないことを考えると、業界内の他の人たちがしていることをあまり気にせずに何かおもしろいことをする余地は大いにありました。しかし、これが通常よりも少し扱いにくい計画になった原因がいくつかありました。その段階ではブランド名がなく、確定していたのはコレクション01の素材と、当初のデザイン展開だけでした。議論する必要があった主な検討事項は、将来のコレクションがどのようなものになるかわからないという未知の部分についてでした。コレクション02はすべてガラス、または木材などでできている可能性があることを考慮すると、特定した素材に関連する名前を付けることは避けたかったのです。おそらくそうではないとは思いますが、私たちには知る由もありませんでしたし、今でもわかりません。

最終的に私がたどり着いたのは、私たちはこの未知を活用するしかない、ということでした。この状態を隠そうとするよりも、ブランドの全体的なテーマ、「まだ描かれていない物語」の一部にしようと思ったのです。馬鹿げているように聞こえますが、そうすることでストーリーテリングという概念で枠組みを作り、不変の部分に焦点を合わせることができるようになりました。新しいコレクションのそれぞれには、常に3つ以上の物語のカテゴリーがあることはわかっていました。つまり、1.素材/起源、2.職人/製作者、3.コレクションのデザイナーです。また、そこからブランド名のアイディアが生まれ始めました。最初の戦略資料の中で、ブランドのアイディアがどのような名前で機能するかを話すために、私は「Volume(ボリューム)」を使用していましたが、これが全員の頭の中に定着しました。残念ながらこれを商標登録することはできませんでしたが、クリスマス休暇の数週間を使って関連性のある名前を模索し、最終的に名前に「New(ニュー)」をつけるだけで商標登録が可能になるということに気がついたのです。

そこからはすべてが落ち着く所に落ち着きました。私たちはパンフレットではなく、本を製作しました。デザイナーが提供する製品名は、そのデザイナーにとって何かしらの意味をもった物語に由来したもので、当然ながら作品の性質に関係した名前になりました。ビジュアルアイデンティティには、美学と学術の融和を図ろうとする要素がありますが、これはどちらかというと私たちが開発したブランドの個性に対する答えといった方が近いでしょう。コレクションにはそれぞれ特有の色遣いがあります。そのため、コレクション01で使われたエルバとの対比を狙ったイヴ・クライン風の青色は、コレクション02では別のものに置き換えられることになります。

New Volumes
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“構成要素すべての中心にいて、あらゆるものが「ブランドのコンセプト内」にあるようする”
NE:
プロジェクトには、デザインや写真、Webサイトなど、様々な分野がありますが、どのように取り組んだのでしょう?
MG:

2018年初頭、クリエイティブディレクターのトーマスが私(ブランド戦略、ビジュアルアイデンティティおよびデザイン担当)とショーン・フェネシー(Sean Fennessy / 写真と動画担当)、そしてナタリー・ターンブル(Natalie Turnbull / スタイリング担当)を製品や採石場、工場を撮影するために海外に行くチームに招き入れました。この2年ほどの間、ずっとショーンと仕事がしたいと思っていたので、クライアントのおかげで一緒に働けるようになったのには驚きました。ショーンは採石場と人物を撮影してもらうのにうってつけの人物です。ショーンには製作の経験はそれほどありませんが、工場内で間に合わせのスタジオを作った時の彼はとてもいい仕事をしたと思います。ナタリーは若いながらも経験は豊富で、才能と熱意を持ち込んでくれました。

私は仕事の関係で行くことはできませんでしたが、打ち合わせをして連絡を取り合っていました。販促用品全体に使われている素晴らしい画像は、彼らがギリシャに約1週間ほど滞在した際に撮影したものです。何年もArtedomusと共に仕事をしているゲーリー・ベンター(Gary Venter)が、ウェブサイトを制作しました。コピーはマシュー・ハースト(Matthew Hurst)によるものです。彼とは以前に仕事をしたことがあり、本当にユニークで多彩な経験の持ち主で、私が重要視した点でした。ライティングは味気なくなってしまうことがあるので。

私の仕事は、このような構成要素すべての中心にいるように心がけ、全員が全体の仕事内容を把握し、あらゆるものが「ブランドのコンセプト内」にあるようにし、そして期限内に完結させることです。もし1人で仕事をしている場合は、クリエイティブディレクターやデザインディレクター、シニアデザイナー、プロジェクトマネージャーを自らが行うしかありません。この仕事をしていた時期は、スタジオ内が張り詰めていた期間でした。私は同時進行で同じスケールの案件が2つと、小さめの案件を多数抱えていましたので、助けを求めました。すべての仕事をやりこなすため、1か月間は別のデザイナー、フィービー・ダン(Phoebe Dann)に一緒に働いてもらいました。

New Volumes
NE:
どんな書体を使用していますか?また、なぜそれらを選択したのでしょう?
MG:
プライマリータイプフェイスは、Tankboysによる改訂版の「Forma Nuova」です。一緒にStorm Type Foundryの「Academica」を使用しました。アイデンティティ開発を始めた時に、長年待ち望んでいたForma Nuovaがついにリリースされたので、運命的なものを感じました。ほとんどのデザイナーがそうしていると思いますが、私はいつも適切な書体のセレクションで名前をセッティングするだけでプロジェクトを開始します(5書体以内です)。通常は字形で選択します。どの書体が本質的に独自の個性を持っているのかがわかります。Forma Nuovaには、美しいプロポーション、素晴らしい異体字のセットがあり、楽に様々なワードマークを制作することができます。Academicaは、クラシック、不変的な雰囲気を与えました。
All images © M.Giesser