ジェシカ・マクゴーワン: 『Primary Paper』のキュレーションとデザイン

Published: 19.11.13 Category: Interviews
ジェシカ・マクゴーワン: 『Primary Paper』のキュレーションとデザイン

ベルリンを拠点とするグラフィックデザイナー、ジェシカ・マクゴーワンJessica McGowan)。フリーランスのグラフィックデザイナー兼アートディレクターとして活動するほか、スタイリストであるコキート・カシバCoquito Cassibba)とのプロジェクトで、雑誌『Primary Paper』を出版しています。今回は、彼女が関わる仕事や『Primary Paper』について話を伺いました。

NE:
ご自身について教えてください。
JM:

私は、フリーランスのグラフィックデザイナー兼アートディレクターです。オーストラリアのシドニーで育ち、2012年にニューヨークに移住しました。そこで6年間働いて後、現在拠点にしているベルリンに移りました。

NE:
現在はどのようなプロジェクトを手がけているのでしょう?
JM:

ここ数年の特に大きなプロジェクトは『Primary Paper』です。また、ブランドアイデンティティやアートディレクションを中心に、あらゆるプロジェクトに個人で携わっています。フリーランスとして大手ブランドのインハウスも担当していて、たとえば現在はベルリンの音楽テクノロジー企業、Abletonの仕事をしています。

Jessica McGowan
Jessica McGowan
NE:
『Primary Paper』について教えてください。
JM:

『Primary Paper』は、私とスタイリストのコキート・カシバ(Coquito Cassibba)がキュレーションと編集を行っている雑誌です。

毎号、その時々のファッション、アート写真のトレンドに注目し、テーマに沿った寄稿者を選んで概要をまとめています。例えば、前号は「年齢」がテーマでした。大勢のフォトグラファー、さらにはブランドでさえも、もはや「若者」や「若々しさ」に焦点を当てていないことに気づきました。テーマとキャスティングの多様性に変化があり、とても新鮮で、かつ私たちが探求し、世の中に知らせたいことでした。

今年の12月に発行する次号のテーマは「環境」です。現在のアートやカルチャーと非常に関連性が高い一方で、非常に政治的なトピックでもあります。

Jessica McGowan
Jessica McGowan
NE:
なぜ雑誌を出版したのでしょうか?
JM:

始まりは数年前でした。私は遊びや仕事の中で色彩のコンビネーションやパレットを検討するムードボードをいくつも作っていました。このムードボードの多くは単色で、さまざまなスタイルの写真を集めましたが、単一の色やトーンでまとめていました。ボードを見たコキートが、そのアイデアを探求する雑誌を始めることを思いつき、コラボレーションを私に提案してきました。2人とも写真のバックグラウンドがありますが、それぞれ持っているスキルは異なるので、ぴったりの組み合わせでした。

創刊号では「色彩」をコンセプトに、各記事をそれぞれ異なる単色で提示しました。雑誌を発展させていくにつれ、アイデアとテーマも「色彩」を超えて、その時々に関係の深いテーマへと広がっていきました。

“写真に注目を集めるために、グラフィックデザインは抑えた調子に”
NE:
『Primary Paper』は、どのようなコンセプトでデザインされているのでしょう?
JM:

雑誌のデザインの方向は、最初は「色彩」のコンセプトに焦点を当てていました。毎回、その号の写真に合うパレットを作ろうとしています。創刊号のパレットは、原色にフォーカスし、多くの写真が色彩豊かなため、とても大胆で濃厚な印象になりました。最新の号では、写真はもっと落ち着いた色合いになっているので、パレットもきれいなオリーブ色、桃色、明るい空色といった素朴なものになりました。

写真に注目を集めるために、全体的にグラフィックデザインはかなり抑えた調子にしています。でも、私はポップではっきりした色を重ねて遊ぶのが大好きです。

Jessica McGowan
Jessica McGowan
NE:
『Primary Paper』にはたくさん寄稿者がいますが、どのようなプロセスで制作されているのでしょうか?
JM:

通常、コキートと私がその号のテーマを決めて、ブレインストーミングをするところから始めます。それから概要と、テーマに合うと思われる寄稿者のリストをまとめ、連絡をとります。雑誌が多少知られるようになったので、幸いにも優れたフォトグラファーが寄稿したいと連絡をくれることもあります。

その後、寄稿者と一緒にストーリーのアイデアを話し合い、撮影を進めます。制作の中で面白いのは、ストーリーが形になっていく過程を目の当たりにし、寄稿者と協力して最終的な編集とレイアウトを仕上げていくことです。

Images © Jessica McGowan