
ホセ・ベッセガ(Jose Bessega)とイヴォ・パルチーニ(Ivo Pallucchini)によるデザインスタジオ、Amateur(dot)rocks。ラテンアメリカやヨーロッパなど様々な場所で活動し、グローバルで多様な視点を培ってきました。自らを「放浪者のデュオ」と称し、現在はアムステルダムを拠点としています。彼らが手がけた、クリエイティブスタジオ「Studio Lore」の仕事について話を伺いました。
Studio Loreは、アムステルダムを拠点とするクリエイティブスタジオです。古典的、非伝統的なバックグラウンドを持つアーティストやライターがおり、レッドライト地区にある美しい旧修道院で世界へ向け活動しています。


1年前、私達はベルリンを拠点にしていましたが、Studio Loreのクリエイティブディレクターであるジェームス・イエーツ・スミス(James Yeats Smith)が、アムステルダムで大手スポーツブランドのグローバルキャンペーンに参加しないかと誘ったのです。同時にスタジオ用の新しいビジュアルアイデンティティを作る必要性が出て、ジェームスや非常に才能のあるチームと肩を並べ、相乗効果の中、クリエイティブな環境で仕事ができました。
ビデオ通話で初めて話した日までジェームスのことは知りませんでしたが、すぐに意気投合しました。その一方、Studio Loreは2019年初頭、ビジュアルアイデンティティが完成した時に正式に稼働し始めました。それ以前は計画段階だったのです。


プロジェクトが始動したときには、スタジオ名はすでに決まっていました。Studio Loreの創設者兼ECDであるボイド・コイナー(Boyd Coyner)が、このプロジェクトの精神、ストーリー、野心を私達に伝達する役割を担っていました。
主な目的は、現代的でシンプル、かつ大胆な美学に基づいた、Studio Loreをクリエイティブ業界で際立たせるビジュアルの個性を作ることでした。また、文化的影響を追求する重要なストーリーテリングの手段でもあります。
「Lore(ロア)」とは、誰もが簡単に口頭で物語や神話、伝説を共有、交換するということです。ですから、話し言葉の音から主なインスピレーションを得ました。口述をグラフィックで表現するため、すべての人に言語を届ける普遍的なシステムである音声言語をビジュアル、ライティングツールとして採用することにしました。このダイナミックでタイポグラフィックなビジュアルアイデンティティの基礎には、国際音声記号(IPA)を使用し、通常の文字と音声記号を混在させました。タイポグラファーであるルーカス・シャープ (Lucas Sharp / Sharp Type)と一緒に仕事をする機会を得て、ブランドアイデンティティとして使用できる53文字の音声記号を開発しました。
また、人類が火を起こす方法を発見して以来、炎の周りに集まって物語を語ったことからインスピレーションを得て、火を取り入れました。Studio Loreの役割は、現代のキャンプファイヤーに火をつけ、人種や文化、信条を超越した会話や物語をかき立てることです。
草案からOgg Type Italicが、ブランド音声言語の候補フォントとして上がっていました。私達は個性のあるセリフ体や広範囲の字体を探し、記号に基づいた奇妙なアルファベットを読み上げている感じが伝わるディテールを求めました。チームで議論を重ねた結果、ニューヨークを拠点とするタイプファウンドリー、Sharp TypeのOggを使用することにしましたが、音声記号を完成するにはまだ53もの文字が必要でした。そこでルーカス・シャープ(Lucas Sharp)とチャントラ・マレー(Chantra Malee)へ連絡を取り、コラボレーションを提案しました。幸運にも彼らはこのプロジェクトに強い興味を持ってくれて、Oggを新しい口語の世界へ拡張することを喜んでくれました。コラボレーションはとてもスムーズに進み、前向きな会話とフィードバックを繰り返したあと、美しく、人目を引く、新しいクリエイティブスタジオに相応しい音声記号が完成しました。



容易に認識され、他のクリエイティブスタジオとは異なるブランドを作り出すという方針に沿って、仕事のショーケースやスタジオの情報だけでなく、ブランドのコミュニケーション、コンセプチュアルなものとなるWebサイトを設計しました。バルセロナを拠点とする才能あるWebデベロッパー、アルトゥーロ ・カスティヨ・デルガード(Arturo Castillo Delgado)と密接に連携する機会に恵まれ、すべてのクリエイティブコーディングを彼が担当しました。大胆で固定概念を打ち砕くようなウェブサイトにするため、各セクションに多くの検討時間を費やし、各文字、各ピクセルを大切にしました。ギャラリーテンプレートにソーシャルメディアのアスペクト比を含めたり、炎の画像を追加して「燃やす」ことができる機能などの細部は、ウェブサイトのためだけでなくブランディング全体に及ぶ創造と開発プロセスの例です。
